私の好きな作家さんの一人、浦上陽介さん。
出会いは数年前、高級日本酒ブランドTAKANOME様のコラボ企画で取材させていただいたことがご縁となりました。
(実はもっと前から関澤製作所のヒデさんからお話を伺っており、一方的には存じ上げておりました)
浦上さんは蔵王に工房を構え、山と木々とともに豊かな時間を過ごされています。
一見物静かな印象の浦上さんですが、案外話しやすくて、初対面なのにずいぶん長居してしまった記憶があります。
[この写真の木箱は台湾へ旅立っています]
その後は時折工房にお伺いさせていただき、いろいろと世間話をさせていただいておりますが、拝見させていただく作品は、どの作品もそれぞれの表情を持ち、感情を感じさせてくれます。
2023年に拝見させていただいた浦上さんの作品の中で、特に心奪われた作品がありました。
それが「仏の手」です。
なんとも言葉では言い表せないオーラを纏ったその佇まい。
ひとつは素材がそのまま活きた深いトーンの木目の手。
もうひとつは銀箔で包まれ、出来上がってから何十年も経ったのだろうと錯覚してしまう程に木と箔が調和した手。
見ているだけで気持ちが落ち着き、悩むことなくオーダーさせていただきました。
時に木の表情そのままに。時に浦上さんが思うように表情を削り出し。
木を選ぶところから始まる浦上さんと木々との対話は、どんなところで合意するのかはわからないけれど、双方の納得したところでひとつの形として出来上がるのだと感じています。
儚さ、優しさ、荒々しさ。
ひとつひとつ、それぞれの表情を持って、それらは誰かの暮らすところに旅立ち、誰かと一緒に暮らしているのです。
近々工房にお伺いして「仏の手」を受け取ってきます。私の暮らしに「仏の手」を迎え入れる日がとても楽しみです。
山口 晃